星景・夜景写真の撮影用として「光害カットフィルター」というアイテムがあるのをご存知でしょうか。星景・夜景を撮る際に街灯りなどが原因の色被りを低減するものです。
この記事ではマルミ光機が昨年11月に発売した光害カットフィルター「StarScape」を例に、その特徴を星景写真家の北山輝泰さんに紹介してもらいました。(編集部)
光害とは
光害とはその文字が表すように、様々な光がもたらす悪影響のことだ。
主な原因としては、日常生活の中で使う電球の明かりや道路沿いの街灯である。それらは当然必要なもので無くすことはできないが、不必要なほど過剰に照らしてしまい、本来の夜空が失われてしまっているのが現状と言える。
対策としては、照明器具の設置場所や数の見直し、照射する角度を下に向けるなど様々なことがある。そのような取り組みを行なっている自治体もあり、少しずつであるが光害は関心の高いトピックになっている。
光害カットフィルターとは
光害カットフィルターとは、光害が夜の風景写真や星景写真に与える悪影響を軽減するために作られた特殊なフィルターである。
光害の主成分である水銀灯やナトリウムランプの 波長を軽減するように作られているため、光害で生じてしまう夜空の色カブリを本来の美しい夜空に近づけてくれるのが特徴だ。
光害カットフィルターの使用例
それではシチュエーションを変えて撮影した作例をお見せしながら、光害カットフィルター(マルミ光機のStarScapeを使用)の実力について詳しくご紹介したい。結果を検証するため、付け外しを行いながら撮影をしたものだ。
最初の作品は、別府方面の夜景とオリオン座の写真である。街の明かりに加 え、自衛隊の駐屯地の明かりが眩しくマゼンダ寄りに色カブリしてしまっているが、フィルターのおかげで全体的にフラットな色味になっている。
夜景が見える展望台などで星景写真を撮るシーンは多々あるが、このようなシーンで光害カットフィルターは有効である。
次は、福岡県にある大平山の山頂から南中するカノープスを狙って撮影した写真だ。手前に山があるため、直接的な明かりはある程度遮られてはいるものの、行橋市や田川市の明かりで色カブリが生じている。
このように、光害の影響は街の近くだけではなくある程度離れた場所でも受けてしまうため、遠方への遠征でも使用する機会が多い。
次は季節限定の光害についてご紹介をしたい。この写真は、河口湖総合公園内にあるくるみの木とオリオン座を撮影したものだ。左側の写真を見ると、木立の向こう側がわずかにオレンジ色に色カブリしているのがわかるだろう。これは、富士山の麓にあるスキー場のナイターの明かりである。
夏の時期には光害がない場所でも、冬の時期にだけ点灯するイルミネーションやスキー場の明かりによって、このように色カブリしてしまうことがあるため注意したい。
山の上こそ光害カットフィルター
夏の登山シーズンに合わせて、山に登って星景写真を撮ろうと考えている読者は多いのではないだろうか。実はそういう撮影場所こそ光害カットフィルターを使って撮影してもらいたいシーンだ。
高い山で周囲が見渡せる環境というのは、遮るものがないため、かなり遠くの光害の影響も受けてしまう。
写真は山梨県の竜ヶ岳の山頂付近で撮影したものだが、富士吉田市や遠く関東方面の光害まで写ってしまっているのがわかる。このように標高が高い山に登って撮影するシーンで、光害カットフィルターをぜひ携行してもらいたい。
地平線付近の星を撮りたいときに
同じ場所での撮影で、今度は時間帯をずらして撮影したものをご紹介したい。
これは、地平線から昇る夏の天の川を撮影したものである。地平線付近というのは最も光害の影響を受けやすいため、東の空から昇る星座や、西の空に沈む星座を撮影するときにも光害カットフィルターが役に立つ。
月明かりがあっても
月明かりがあるかないかで、光害の写り方に違いがあるかを検証した。
写真は談合坂SAを見下ろす高台より神奈川、東京方面の光害を写したものである。使用するカメラ機材、露出やホワイトバランスの設定は同じにし、新月の時と月齢10.5の明るい月が照らす日と撮 影する日にちを変えて比較を行った。
結果として、写る星の数や夜空の色味に明確な違いはあったものの、光害の写り方には大きな違いはなかった。月明かりを生かして撮影を行う場合にも光害カットフィルターは必須であろう。
インターバル撮影への活用
カメラのシャッターを一定間隔で切り続けた後、得られた複数枚の静止画をパソコン上で合成し、星の軌跡を表現する技法のことを比較明合成という。この比較明合成でも光害カットフィルターは有効的だ。
一般的に迫力のある作品を残そうとすると30分程度はシャッタ ーを切り続ける必要があるが、そうすると合成のもととなる写真も膨大な枚数になる。その写真1枚1枚に対して光害を目立たなくする処理をするのは骨の折れる作業だ。光害カットフィルターをつけて撮影を行うことは、後処理のステップを減らすことにもつながることを覚えておこう。
光害がない場合は
ここまでは光害がある作例をお見せしてきたが、場所を選べば光害がないところも当然存在する。
例えば、周りを高い山に囲まれている谷間の場所では、山が光害を遮ってくれる。また、海岸線も同様だ。例えば、房総半島の東側で太平洋側を撮影した場合は光害の 影響はほとんど受けないだろう。
予め、撮影場所とどちらの方角を撮影するのかを決めておけば、光害カットフィルターを装着する必要があるかは自ずと判断がつく。
StarScapeのオススメポイント
ここからは「StarScape」ならではの特徴を紹介していきたい。
高い透過率
StarScapeをオススメしたいポイントの一つ目は、高い透過率である。フィルターを使用 時でも露出倍数が1.2なので、フィルター無しの状態と同じ設定でもさほど違和感なく撮影することができるだろう。
ちなみに筆者の場合は、RAW現像することも前提に1/3段分多めに露出をかけて撮影している。星の写真は、1段変わっただけでも星の軌跡の長さやノイズ量に影響を及ぼすため、できる限り露出倍数が低い方がありがたい。
まとめ
少々逆説的になるが、私は光害を完全に取り除いた写真は不自然だと考えている。それ は、目の前の風景の中にある街の存在や人の営みがなくなってしまうように感じられるからだ。
ただあまりにもそれが顕著で星空に影響が出てしまっている時には、「StarScape」を使うようにしている。光害をどれくらいカットするかは、ユーザーによっても好みが分か れるところでもあり非常に難しいところだが、「StarScape」はちょうど良いレベルでのカットを実現していると感じた。
星景写真は夜間の撮影で、昼間のように自由自在にカメラの操作するのは難しい。そのため、できる限り撮影の労力は減らしたいというのが本音だ。とりあえず付けておけばそこそこ綺麗な星景写真が撮れるというお手軽さは、撮影を続けようというモチベーション維持につながる。
これから暖かくなるといよいよ星景写真の本格的なシーズンが始まる。ぜひ今年は光害カットフィルターを使って、ワンランクアップの星景写真の撮影に挑戦してもらいたい。
制作協力:マルミ光機株式会社
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March 19, 2020 at 01:00PM
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便利なアイテム「光害カットフィルター」で星景写真をグレードアップ! - デジカメ Watch
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