2019年の製パン業界は、「イーストフード、乳化剤不使用」強調表示という新たな課題に対応した。難しいかじ取りが求められるが、「軟着陸」に成功した格好だ。さらに2019年上期は、2018年に実施した値上げの影響を引きずった。
日本のパンが訪日外国人から高い評価
2018年5~6月に、米国カリフォルニア州の天候不順によるレーズンやクルミの大幅減産に伴う、2017年産の価格高騰への対応を主要因に、大手製パンメーカーを中心に約10%の値上げを実施した。
また7月以降にも、大手製パンメーカーを中心として一部製品の値上げを実施。小麦粉・油脂類・包装資材に加え、人件費や燃料費など各種コスト増の吸収は企業努力では難しいと判断したからだ。
小売業との価格改定の折衝では、かつて見られたような拒絶反応は見られず店頭売価は上昇した。販売単価は上がったが、価格改定の時期と、2018年の記録的な猛暑襲来時期が重なったことで、需要減少を招き販売個数が減少、トータルの販売実績は前年並みとなった。
こうした2018年の流れは2019年上期まで影響を受けた。一方下期は、7月の気温が低温で推移したことでパンの需要が活発化した。これを契機に、販売も回復基調に入った。
2019年1~10月累計のパン生産数量(食品需給研究センター公表)は、104万7010トンで前年比2.4%増となった。カテゴリー別では、食パンが50万1521トンで同2.2%増。菓子パンは34万2500トンで同1.7%増、学校給食パンは1万9787トンで同1%減、その他パンは18万3203トンで同4.5%増となった。
明るい話題としては、ラグビーワールドカップが日本で初めて開催され、山崎製パンの「ランチパック」をはじめとする日本のパンが訪日外国人から高い評価を得たことがある。2020年は多くの外国人観光客が日本を訪れることが確実となる中、インバウンド需要喚起に大きな期待がかかる。
日本パン工業会の飯島延浩会長は、食パン・菓子パンの包装紙に「イーストフード、乳化剤不使用」などを強調した表示を製パン業界の課題とする考えを5月16日に東京都内で開催した総会後の会見で明らかにした。
飯島会長は、「イーストフード、乳化剤不使用」と強調表示された製品に、「食品添加物としての表示義務を回避する代替物質が使用されている」こと、「量産ラインによる食パン、菓子パン製造でイーストフード、乳化剤の使用は、製パン技術の根幹となる」こと、さらに「イーストフードや乳化剤は安全、健康面で問題があるとの誤認」「イーストフードや乳化剤不使用表示製品は使用製品よりも優位性があるとの事実誤認を与えるおそれ」があり、適切な表示とはいえないと指摘した。
現在、同会や日本パン公正取引協議会で「イーストフード、乳化剤不使用」強調表示をやめるために公正競争規約改定作業を進めているが全会員の合意には至っていない。飯島会長は、協議を進め早期に「消費者の自立的・合理的な商品選択に資する、添加物表示のあるべき姿」の実現を目指す考えを強調した。
この問題については、1月から同会と日本パン公正取引協議会で「イーストフード、乳化剤不使用」強調表示が行われた経緯と該当食パン・菓子パンに含有する油脂中の乳化成分の分析を実施した。
その結果該当するパンに使用されている油脂類は、添加物表示欄に乳化剤としての表示を必要としない新規技術で開発され添加物表示を回避しているが、乳化剤は代替物に代替され該当するパンの生地中には乳化成分が定性・定量されておりイーストフードも代替物だった。
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