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厳格な食物戒律を守るサマリア人 羊を屠って食べる伝統儀式に参加(GLOBE+) - Yahoo!ニュース

トランプ米大統領が1月に公表したパレスチナに関する和平案では、ヨルダン川西岸を中心的な領土とするパレスチナ国家を樹立する内容が盛り込まれた。イスラエルとパレスチナの間で争いが続くヨルダン川西岸には、少数民族サマリア人も住んでいる。彼らのアイデンティティーを保つのに重要な要素が、宗教的儀礼とともに厳しい食物戒律だ。サマリア人の食を求め、ヨルダン川西岸ナブルス近郊にあるゲリジム山を訪ねた。

【写真】羊を屠って食べるサマリア人の伝統儀式

「絶滅の危機」から回復

サマリア人は、新約聖書の中でイエス・キリストが語ったとされるたとえ話に登場する。強盗に襲われた人が道端に倒れていたところにユダヤ教司祭ら3人が通りかかり、ただ一人助けの手を差し伸べたのがサマリア人だったとして、イエスは隣人愛を語ったなどと解釈される。「善きサマリア人」として欧米社会では、自分の不利益を顧みない行為を示す比喩的な表現としてよく使われている。

ユダヤ人やキリスト教徒らとの歴史的な対立によってサマリア人は「絶滅の危機」に瀕し、サマリア人古老によると、1919年3月にはサマリア人の数は191人にまで落ち込んだ。しかし、ユダヤ人らとの結婚を認めるなど民族のルールを変更し、今では814人にまで回復した。

古代の調理法で羊を丸焼き

ナブルスに滞在中、サマリア人の知人に「過越祭を是非、観に来てくれ」と誘われた。サマリア人は、古代イスラエル人の習慣を多く残していると言われ、この過越祭もその一つ。この祭は、出エジプトを祝うもので、ユダヤ人とも共通する。サマリア人は、モーセ五書(トーラー)を聖典とするものの、聖地はユダヤ教がエルサレムであるのに対してゲリジム山だ。

自ら羊を屠って丸焼きにする儀式は、2500年以上も前から続けられてきた。2メートル以上の穴が10個近く掘られ、昼過ぎから乾燥したオリーブの木を投げ入れて火を付け、釜を暖める。夕方、約60頭の羊が一斉に屠られ、処理した後に2メートル以上の串に刺し、1つの釜で数頭を丸焼きにする。羊を投入した後、炎で焦げないよう泥の蓋で手早く密閉して空気を遮断。蒸し焼きの状態にする。

羊を投入してから約4時間。釜の熱でじっくりと焼かれた羊が取り出されたのは午後11時ごろだった。蓋が破られると、蒸気が激しく立ち上る。羊の焼けた香ばしい匂いが立ち込めた。この羊は、サマリア人や近隣に住むパレスチナ人しか食べられないことになっているが、知人は「隙をうかがって少し差し入れてくれる」と約束した。だが、「香ばしくてとろけるような肉」(知人談)を味わうチャンスは訪れなかった。

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April 16, 2020 at 05:11PM
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